東京高等裁判所 昭和29年(う)2743号 判決
被告人 内藤一雄
本件記録中の被告人の前科調書及び川越少年刑務所の回答書によれば、被告人は昭和七年一月一五日生であつて、昭和二四年八月二四日長野地方裁判所岩村田支部において、住居侵入強盜罪で懲役三年以上四年以下に処せられ、その刑の執行を受け昭和二七年二月二五日仮出獄処分によつて釈放されたが、昭和二七年四月二八日政令第一一八号減刑令により右刑は懲役二年以上二年八月以下に減刑されたので、同刑の執行は昭和二七年四月二七日受け終つたものとなつたのであつて、原判決言渡の昭和二九年九月一一日迄には刑法第二五条第一項第二号所定の期間を経過していないことは所論のとおりであり、原判決は刑法第二五条、第五六条、第五七条の規定をもつて少年法第六〇条に所謂人の資格に関する法令と解釈したから右の如き前科があるのに昭和二七年四月二七日からは将来に向つて刑の言渡を受けなかつたものとして、累犯加重もせず、又刑法第二五条第一項第二号所定の期間を経過しないのに被告人に対し、刑の執行猶予を言渡したものと認められるのである。
しかし旧少年法第一四条(少年法第六〇条)に所謂人の資格に関する法令とは例えば禁錮以上の刑に処せられた者は判検事、弁護士となることができない旨を定めた裁判所構成法第六六条、旧弁護士法第五条(現裁判所法第四六条、検察庁法第二〇条、弁護士法第六条も同様である。)のような規定を指すものであつて、刑の執行猶予又は累犯に関する刑法の規定の如きものはこれに該当しないとすることは夙に大審院判例(大正一五年(れ)第三二六号、同年六月二三日第四刑事部判決)の存するところであり今日これを変更する必要ありとも認められないから、当裁判所もこの見解を相当と認める。
しからば原判決は法令の解釈適用を誤つたものというべきであり、この誤は勿論判決に影響を及ぼしているものであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄すべきものとする。
(裁判長判事 久礼田益喜 判事 武田軍治 判事 石井文治)